( 4 )請求・回収情報データベース

少なくとも月次決算で売上高の計上を得意先への請求額で計上している場合には、請求・回収情報データベースが売掛金残高の明細という役割を果たします。

しかも、会計情報からでは得意先別に限定されがちなものを、受注番号別やグループ(プロジェクト)別などきめ細かくブレイクダウンすることが可能です。

また、とくに外貨額について会計上いくらで計上したのかとは無関係に計上するため、会計上、売掛金残高を円換算する際のチェック資料にも利用することができます。

請求・回収情報データベースの構成

請求情報も、すでに販売(請求)ソフト等によりデータベース化されていることが多いものですが、これをExcel等に切り出してカスタマイズします。

最低限押さえておかなければならないと思われるデータは次のとおりです。

  • 請求先
  • 受注番号
  • 売上計上区分
  • 会計上のグループ
  • その他経営管理上のグループ
  • 請求書No
  • 請求日
  • 通貨
  • 本体価格(税抜き)
  • 請求金額(税込み)
  • 支払期日
  • 回収日
  • 回収金額
  • 残高
  • 請求書に記載した摘要等その他参考事項
  • 手形番号、手形決済日、資金化日、残高
  • ファクタリングの区分、決済日、資金化日、残高

各項目の解説

請求・回収情報データベースの項目についてコメントいたします。

売上計上区分、会計上その他経営管理上のグループ

通常の販売(請求)管理ソフトは、販売先に請求する対外的なものであり、内部的な売上計上基準や会計上あるいは経営管理上のグループのデータまで入力されていないことがあります。 そこで、受注情報データベースと同じく、請求・回収情報データベースでもこれらの情報を追加することになります。

通貨

請求・回収情報データベースは、会計上どう換算して円貨額を計上したのかではなく、受注金額に対してどれだけの請求がありどれだけの回収があったかを把握することにあります。

請求・回収情報データベースでの通貨は、原則として、受注番号データベースでの各受注番号ごとの受注金額がどの通貨によるかに依存します。

このため、受注金額がドルの場合には、実際の回収額もドルベースでとらえることになります。

なお、受注金額がドルであっても、実際の請求金額が円であり、回収も円の場合には、円でコントロールしてもかまわないと思います。ただ、受注金額がドルの場合で、ドルで請求をした場合で実際の回収が円ベースであった場合には、いちおう回収額をドル換算するとどのくらいなのかを補足しておく必要があります。

だとすると、外貨誰の受注金額の場合には、可能な限り外貨建で管理すべきですし、かつ容易であると考えられます。

本体価格(税抜き)、請求金額(税込み)

相手方への請求書は必ずしもひとつの注文番号における受注金額(に消費税を乗じた額)に限りません。 ひとつの注文番号について、数回の請求を行うこともあれば、複数の注文番号について1回の請求書で請求を行うこともあります。 また、ひとつの注文番号のなかに会計上あるいは経営管理上で異なるグループから構成されている場合もあります。

このような場合には、データベース上で1行にする必要はまったくありません。数行にわたって記載すればよいのです。

このように、1通の請求書の金額を、1行ではなく複数行でデータベースにする場合、ひとつ注意しなければならないのが消費税です。

請求・回収情報データベース上は、1行ごとに本体価格(税抜額)と消費税額と請求金額(税込額)を記載しますが、ほんらい1通の請求書をバラバラに細分していると、数行を合計した金額が端数の関係で一致しないことがあります。データベース上でうまく調整すべきです。これを怠ると、データベース上だけ過請求や過入金という不思議なことが起こります。

この場合の調整方法としては、相手方との実際のやりとりをベースにすべきです。たとえば、ある受注番号について複数の請求書を発行した場合に、それぞれの請求額(税込)の合計額が、当該受注番号の受注金額に消費税率を乗じた額とズレが生じる場合です。この場合には、より妥当な額よりも、相手方との間で実際に行われた金額にデータベースを合わせるべきです。

回収金額、残高等

回収をあくまでも現金の流入とするか、それとも、手形等の受取りをもっても回収とするかは意見が分かれますが、少なくとも会計ルール上は、後者であっても売掛金勘定はゼロとなります。

売掛債権データベースは、会計データとは別個にデータを作って管理することに意義があるわけですが、他方、会計情報と照合ができることで双方の信頼性が担保されるという側面もあります。

そこで、手形による受取りなども回収とすることが望ましいと考えられます。

この場合、手形を受け取った場合には、その手形に関する情報(番号や期日)のみならず、裏書や割引といった情報も適宜追加していくことになります。 それによっては、1行で足りた請求データがさらに数行に細分化しなければならないこともありえます。

なお、1通の請求書の請求内容が複数の性質をもつ場合にはデータベース上は数行に分けるわけですが、このような請求に対して相手方からの回収が請求額の一部にとどまる場合、その回収について、回収額をもってどの部分のものなのか個別的に割り当てることが困難な場合に、どのように割り当てるかが問題となります。これについては、一定のルールによって行うことになります。たとえば、請求の基礎となる事象(引き渡しや役務の提供)の古い順に割り当てるとか、各部分の金額に応じて平均的に回収したとするかなどです。

手形やファクタリング情報

会計上の売掛金勘定によれば、手形を受け取れば売掛金勘定の残高はゼロとなります。しかし、経営管理上の回収とは現金として回収したことが重要です。

手形やファクタリングによって実際に資金として流入した情報を加えることで、受注番号別やグループ別で、資金化していない売掛債権はいくらなのかをより正確に把握することができるのです。

( つづく )