給与所得者目線での所得税等の知識( 5 )家族の「所得」の調べ方

扶養控除等異動申告書にしても、配偶者控除申告書にしても、そもそも扶養控除や配偶者控除の「所得」の金額はどう調べたらいいのでしょうか。

年末調整で一番面倒なこと、それは、家族の所得の金額の計算がわからないことです。家族がバイトしているのかどうかがわからないのはそれはそれでまた別問題ですが、バイトしていて年収はわかっても所得の金額の計算がわからないことです。

そんなときは国税庁サイトの「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を見ましょう。

年末調整でもっとも知りたいこと

年末調整の事務処理をする側からすると、定型的で数だけこなすだけなので、作業スピードが上がるだけでその点での労働生産性はアップするかもしれませんが、高付加価値なお仕事がどうかは微妙です。

そこで、年末調整の対象となるサラリーパーソンご本人にいろんな資料を記載してもらったり、ソフトに入力してもらったりして、その結果をチェックする作業が中心となります。

そのとき、昨年の年末調整結果と比較すれば、「地震保険料の控除証明書(とその申告)がない」とか「家族の国民年金保険料の申告がない」ということに気づいて本人に確認することもできますが、そうでないと、とにかく出てきた資料を信用してそのまま作業を行うことになります。

社会保険労務士事務所や会計事務所に外注すると、社内(の総務部)などと違い、ご本人との距離がますます離れるため、ますますご本人が提出する情報がしっかりしていなければなりません。

さて、年末調整で一番わからないこと、それは、配偶者や家族の所得の金額の計算がわからないことです。

「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」で検索

会計事務所のサイトによっては、すてきな一覧表で示しているかもしれません。しかし、国税庁のサイトに当たるのがもっとも確実で正確といえます。

でも、国税庁のどこを見ればよいのかわからないことが問題ですよね。

ズバリ、「令和〇年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を検索して開いてみましょう。

この表は、「給与等の金額」に対して「給与所得控除後の給与等の金額」が示されています。

「給与等の金額」はまさに額面の給与収入です。「年収いくら?」の時に答える金額です。もちろん、賞与の金額も加えます。 期間は1月1日から12月31日までです。

「給与所得控除後の給与等の金額」、この額がまさに給与所得の金額なのです。

ちなみに、年末調整された「給与所得の源泉徴収票」には「給与所得控除後の給与等の金額」に金額の記載があります。年末調整がされていない場合にはこの欄が空欄になっています。

この点で、「源泉徴収票をもられば年末調整されている」と勘違いしている人が多々いると思われます。これでは月々の源泉徴収された所得税は引かれっぱなしのままで、原則として確定申告をしなければなりません。

ところで、「給与等の金額」つまり、いわゆる額面の給与収入の金額に対して、「給与所得控除後の給与」が示されています。

この表で、いろいろニュースになっているけれどよくわからない部分がそれなりに解明されることがあります。

「給与等の金額」すなわちその勤務先での年収が651,000円未満は、「給与所得控除後の給与等の金額」すなわち給与所得はゼロ円となります。当然に所得税はゼロとなります。

「給与等の金額」が103万円の場合は、「給与所得控除後の給与等の金額」すなわち給与所得は38万円(=103万円-65万円)となります。ここで、所得税は、所得金額(の合計額)から所得控除(の合計額)を差し引いた課税所得金額に対してかかります。所得控除のうち、基礎控除は現行ではすべての人が38万円なので、給与所得は38万円でも課税所得金額はゼロとなり、所得税はゼロとなります。いっぽう、住民税(市県民税や都民税区民税など)の計算では、給与所得の金額の計算は所得税と同じですが、住民税の基礎控除は33万円なので、住民税の課税所得金額は5万円となります。住民税の税率は10%なので5,000円が課税されることになります。つまり、所得税はゼロだけど住民税はゼロではないという状態です。

複数から給与をもらっている場合には合計します。

さて、「給与等の金額」には複数の勤務先から給与をもらっているときは、すべて合計します。

ところで、ご本人のみならず家族も複数の勤務先から給料をもらっている場合は、通常は確定申告をします。なぜなら、年末調整は当然ですが「その勤務先」での「そこでの給料」の額に基づいて行われているにすぎません。若干脱線しますが、年末調整は、扶養控除等(異動)申告書が提出された人に対して行われます。そして、扶養控除等(異動)申告書は1つの勤務先にしか提出できないことになっていますが、実態は複数の勤務先にそれぞれ扶養控除等(異動)申告書を提出していると、それぞれの勤務先で年末調整がされることになります。この場合は、それぞれの勤務先での年末調整は正しくても、ご本人の所得はそれぞれの勤務先の給与収入を合計したところで行うため、合計すると所得税がかかることも少なくありません。

たとえば、家族のひとりが、この勤務先では50万円、この勤務先では30万円、この勤務先では60万円のアルバイト収入があり、それぞれの勤務先に扶養控除等(異動)申告書を提出していると、それぞれの勤務先で年末調整をしてくれ、それぞれすべて給与所得はゼロということで、月々の給料で天引きされた所得税は年末調整で還付されることになります。しかし、実際の給与収入は合計して140万円で、給与所得は75万円になります。この家族は配偶者控除や扶養控除(いずれも所得が38万円以下)の対象にはなりません(配偶者の場合は配偶者特別控除の対象にはなりえます。)。

働き方改革とやらで、勤務先に内緒ではなくおおっぴらにアルバイトができる時代になっているため、このミスは多発していると思われます。さらに、家族内でバイトを内緒にしていると、当然にわかるわけがありません。

さらに、家族内でバイトを内緒にしていると、当然にわかるわけがありません。

ご家族のバイト先が居住地の市町村に「給与支払報告書」を提出すると、市町村の住民税課からブーメラン的に税務署を通じて、ご本人の勤務先に「この方の年末調整は間違えている(扶養控除ができない)ので、源泉徴収しなおしてください」と納付書が丁寧に入った郵便物が届きます。

給料以外の収入もあるとき

給与収入のほかの所得がある場合には、「確定申告に関する手引き等」で検索します。

国税庁サイトとなって、各年分の手引き等へのリンクがあります。

このなかで、「所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き(確定申告書B用)」を開きます。

確定申告書Bという様式は、給与所得しかない人のための確定申告書Aではなく、給与所得以外の所得がある人が使うものです。もちろん、給与所得しかない人もB様式で申告することができます。

確定申告書Bという様式は、給与所得しかない人のための確定申告書Aではなく、給与所得以外の所得がある人が使うものです。もちろん、給与所得しかない人もB様式で申告することができます。

そこの「手順2 収入金額等、所得金額を計算する」を見て検討します。

何だかよくわからない場合は、国税庁サイトのトップページに戻り、「税について調べる」から「タックスアンサー(よくある税の質問)」で調べてみましょう。

( つづく )