( 4 )政策的に消費税が課されない取引(非課税取引)

非課税取引は、消費税の課税の対象となる要件「国内」「事業者」「資産の譲渡等(資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供)」をすべて満たしているものの、法律の規定よって課税の対象しないものです。「土地の譲渡」「土地の貸付け」「預貯金の利子」「貸付金の利子」「保険料」「商品券」「登記・登録・検査等の手数料」「住宅の貸付け」などが該当します。

これらの取引について支払った額には消費税は含まれていません。このため、消費税を支払ったものとして申告してしまうと過少に申告・納付となってしまいます。

しかし、非課税取引にかかわるミスで最も深刻なのは、課税売上割合の低下による消費税の過少申告(仮払消費税の過大控除)の問題です。

非課税取引の種類

非課税取引とは、「消費税の課税の対象となる取引」ですが、法律の規定により課税の対象とはならない取引です。

つまり、「国内」「事業者」「資産の譲渡等」の要件はすべて満たしているのです(満たしていない場合はそもそも課税の対象とはなりません。)が、政策的な見地等から課税の対象とならない取引です。このため、消費税法の別表第1に列挙されています。

  • 土地の譲渡及び貸付け
  • 有価証券等の譲渡
  • 支払手段の譲渡
  • 貸付金の利子
  • 預貯金の利子
  • 保険料
  • 日本郵便株式会社が行う郵便切手類の譲渡
  • 印紙の売渡し場所における印紙の譲渡
  • 地方公共団体などが行う証紙の譲渡
  • 商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
  • 国等が行う登記、登録、検査等に係る役務の提供
  • 外国為替業務に係る役務の提供
  • 社会保険医療の給付等
  • 介護保険サービスの提供
  • 社会福祉事業等によるサービスの提供
  • 助産
  • 火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供
  • 一定の身体障害者用物品の譲渡や貸付け
  • 学校教育
  • 教科用図書の譲渡
  • 住宅の貸付け

これらのうち、一般の事業所では、「土地の譲渡」「土地の貸付け」「預貯金の利子」「貸付金の利子」「保険料」「商品券」「登記・登録・検査等の手数料」「住宅の貸付け」が比較的ポピュラーな取引と考えられます。

非課税取引のミスによるリスク

非課税取引は、消費税の課税の対象となる要件「国内」「事業者」「資産の譲渡等(資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供)」をすべて満たしているものの、法律の規定よって課税の対象しないものです。

よって、規定されていないものは課税の対象となります。たとえば、「住宅の貸付け」は法律の規定により非課税取引ですが、「住宅の譲渡」は規定されていないため通常の消費税の課税対象となり、消費税を支払う(預かる)取引となります。

その他、「例外の例外」のように非課税取引とはならず通常の課税取引となるものとしては次のようなものがあります。

  • 1ヶ月未満で土地を貸付ける場合
  • 更地としてではなく駐車場などの施設の利用に伴って土地を貸し付ける場合
  • 1ヶ月未満で住宅を貸付ける場合
  • 株式・出資・預託の形態によるゴルフ会員権などを譲渡する場合

さて、非課税取引のミスによるリスクは、資産の譲渡等を行う(対価を受け取る)側と資産の譲渡等を受ける(対価を支払う)側の双方でおこります。

資産の譲渡等を受ける(対価を支払う)側

資産の譲渡等を受ける(対価を支払う)側からすれば、非課税取引(非課税仕入れ)と不課税取引(不課税仕入れ)との判定ミスや帳簿入力上のミスはさほど深刻ではありません(むしろ実害なし)。

もっとも、非課税仕入れを誤って課税取引(課税仕入れ)としてしまうと、預かった消費税から控除する消費税が過大になり消費税を過少に申告・納付してしまいます。

とくに、地代や住居(社宅)の家賃の支払いなどは、継続的な取引であることが多いため、一つの仕訳が間違えていると、最悪1年分、場合によっては数年分のミスであることも少なくありません。

これらの原因として、(相手のある)取引の判定そのものをミスよりも、取引の判定はミスしていなくても、会計処理(仕訳というよりも仕訳入力の場合が少なくありません。)でのミスであることが少なくありません。

資産の譲渡等を行う(対価を受け取る)側

資産の譲渡等を行う(対価を受け取る)側でも、非課税取引(非課税売上)を課税取引(課税売上)として判定ミスや帳簿入力上のミスをしてしまうと、過大に消費税を申告・納付してしまいます。

しかし、非課税仕入れと不課税仕入れとのミスの場合とは異なり、非課税売上と不課税売上または免税売上(輸出売上)との判定ミスや帳簿入力上のミスは深刻になる可能性があります。

非課税売上、不課税売上、免税売上のいずれも消費税を預からない取引ですが、消費税の申告では「課税売上割合」によって、支払った消費税が全額差し引くことができなかったり、差し引く消費税の額がかわってくるのです。

( つづく )