( 6 )消費税が0%課される取引(免税取引)

輸出取引の場合には、売上の際に消費税を預からなくてよい、すなわち消費税が免除されます。逆に、通関業務の料金や保税地域内での荷役費や運送料や国際運賃についても、免税取引として消費税を支払っていません。

免税取引も、取引に関連して消費税の受取りや支払いがないので、不課税取引や非課税取引と同様ですが、課税の対象となっている点では消費税を預かる(支払う)通常の課税取引と同じで、ただ消費税の税率が0%というイメージです。

免税売上高は消費税の納税義務が免除されるかどうかなどの判定や、課税売上割合の算定にも重要な影響を及ぼします。

免税取引の種類

以下の取引については、消費税がかかる(課税の対象となる)が、消費税を預からなくてよい、すなわち、消費税が免除されます。

  • 日本からの輸出として行われる資産の譲渡や資産の貸付け
  • 上記以外の外国貨物の譲渡またはは外国貨物の貸付け
  • 国内及び国内以外の地域にわたって行われる旅客や貨物の輸送
  • 国内及び国内以外の地域にわたって行われる通信
  • 輸送用の船舶や航空機の譲渡またはこれらの貸付けまたは修理

免税取引の性質

免税取引は、本来ならば消費税を預かる取引(課税取引)ですが、輸出等の特殊性のために免除されるというものです。イメージ的には、消費税が課されない(不課税)でもなく、法律により課税されない(非課税)でもなく、通常の課税取引と同様ですが、消費税を預からなくてよい取引、つまり、「税率0%の課税取引」ともいえるものです。

このため、消費税の申告を一般課税で行う場合で、支払った消費税を全額控除できない場合(課税売上高が5億円超または課税売上割合が95%未満の場合)預かった消費税から差し引くにあたって個別対応方式による場合、支払った消費税のうち(輸出)免税売上にのみに要する部分は、(通常の)課税売上にのみ要する部分に含めることができるため、結果的にその全額を控除することができます。

免税取引が認められるためには、輸出許可証などの書類または一定の事項を記載した帳簿を7年間保存して免税取引であると証明できなければなりません。

免税取引は、基準期間(前々事業年度または前々年)の課税売上高が1,000万円以下などにより消費税の納税義務が免除される事業年度(年)には認められないため、前もって「消費税課税事業者選択届出書」を提出して納税義務が免除されないようにしておく(課税事業者になる)ことが必要です。

国内で行われた取引か国外で行われた取引かの判定(内外判定)

免税取引は国内で行われる取引です。国外で行われる取引はそもそも(日本の)消費税の課税の対象となりません(不課税取引、(課税)対象外)。

国内で行われた取引と判定されてはじめて消費税の課税の対象となり、それを前提にして、免税取引(輸出売上)となるかどうかの検討となります。

内外判定の詳細は、消費税法基本通達5-7-1から5-7-15に詳しいのでぜひご覧ください。

「資産の譲渡」または「資産の貸付け」である場合

譲渡または貸付けが行われる時において当該資産が所在していた場所が国内かどうかで判定します。

消費税法施行令6条1項では、資産ごとに詳細に基準が示されていますが、本項に定められた資産以外の資産でその所在していた場所が明らかでないものについては、当該資産の譲渡または貸付けを行う者の当該譲渡または貸付けに係る事務所等の所在地が国内にあるかどうかで判定します。

(例1)国外で仕入れた資産をそのまま国外の相手方に直送した場合

まず、国外で仕入れるため、譲渡(仕入れ)時の資産の所在場所は国外のため、国外の取引として消費税の課税の対象になりません(少なくとも日本の消費税を支払うことはありません。)。そして、譲渡(売上)時の資産の所在場所も国外のため、国外の取引として消費税の課税の対象になりません。

(例2)国外で仕入れた資産を保税地域から引き取った後に国外の相手方に譲渡した(売上げた)場合

まず、通関手続きをして保税地域から引き取る時に輸入消費税を支払います。そして、譲渡(売上げ)時の資産の所在場所は国内のため、国内の取引として消費税の課税の対象にはなります。そして、免税取引(輸出売上)として消費税が免除されます。

(例3)国外で仕入れた資産を保税地域から引き取らずそのまま国外の相手方に譲渡した(売上げた)場合

まず、国外で仕入れた資産は国内に所在していますが、通関手続きをして保税地域から引き取っていないため輸入消費税は課されません。ただし、譲渡(売上)時の所在場所(保税地域)は日本国内であるため、国内の取引として消費税の課税の対象となります。そして、免税取引(輸出売上)として消費税が免除されます。

(例4)国外で仕入れた資産を保税地域から引き取らずそのまま国内の相手方に譲渡した(売上げた)場合

まず、国外で仕入れた資産は国内に所在していますが、通関手続きをして保税地域から引き取っていないため輸入消費税は課されません。ただし、譲渡(売上)時の所在場所(保税地域)は日本国内であるため、国内の取引として消費税の課税の対象となります。そして、国内の相手方であっても免税取引(輸出売上)として消費税が免除されます。なお、これを購入した国内の相手方が保税地域から引き取ると輸入消費税が課せられることになります。

(例5)国内で仕入れた資産を国外の支店等に移送し、国外の支店が国外の相手方に譲渡した(売上げた)場合

まず、国内で(消費税を支払って)資産を購入し国外に譲渡した場合には免税取引(輸出売上)となりますが、相手方が国外の子会社等(別人格)ではないため内部取引として売上とはなりません。そして、国外の支店が国外の相手方に資産の譲渡した(売上げた)場合、譲渡(売上)時の所在場所が国外のため消費税の課税対象とはなりません。そこで、国外支店への移送が輸出と証明された場合には、この移送は免税取引(輸出売上)とみなされます(みなし輸出取引)。これによって、資産を購入する際に支払った消費税を差し引くことができます。

保税地域からの引き取り関連についての消費税の取扱いの詳細は、消費税法基本通達5-6-1から5-6-6に詳しいのでぜひご覧ください。

「役務の提供」である場合

当該役務の提供が行われた場所が国内かどうかで判定します。役務の提供が行われた場所とは、現実に役務の提供があった場所として具体的な場所を特定できる場合にはその場所をいい、具体的な場所を特定できない場合であっても役務の提供に係る契約において明らかにされている役務の提供場所があるときは、その場所をいいます。

なお、専門的な科学技術に関する知識を必要とする調査、企画、立案、助言、監督または検査に係る役務の提供で、建物(その附属設備を含みます。)または構築物、鉱工業生産施設、発電及び送電施設、鉄道、道路、港湾設備その他の運輸施設または漁業生産施設の建設または製造に関するものは、当該生産設備等の建設または製造に必要な資材の大部分が調達される場所が国内にあるかどうかで判定します。

役務の提供の場所が明らかにされていないもの、役務の提供が国内と国外の間において連続して行われるもの及び同一の者に対して行われる役務の提供で役務の提供場所が国内と国外の双方で行われるもののうち、その対価の額が合理的に区分されていないものについては、役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地が国内にあるかどうかで判定します。

非居住者に対する役務の提供

非居住者に対する役務の提供は免税取引(輸出売上)となるのが原則です。非居住者とは、国内に住所または居所を有しない自然人及び国内に主たる事務所を有しない法人がこれに該当します。

国内に支店、出張所その他の事務所を有する非居住者は居住者とみなされるため、このような非居住者に対する当該役務の提供は免税取引にはなりません。ただし、役務の提供が非居住者の国外の本店等との直接取引であり、当該非居住者の国内の支店または出張所等はこの役務の提供に直接的にも間接的にもかかわっておらず、かつ、役務の提供を受ける非居住者の国内の支店または出張所等の業務は、当該役務の提供に係る業務と同種、あるいは関連する業務でないときは、免税取引となります。

また、非居住者が国内において直接便益を享受するものについては、免税取引とはならず課税取引(課税売上)となります。たとえば、国内に所在する不動産の管理や修理、建物の建築請負、電車・バス・タクシー等による旅客の輸送、国内における飲食または宿泊、理容または美容、医療または療養、劇場・映画館等の興行場における観劇等の役務の提供、国内間の電話、郵便または信書便、日本語学校等における語学教育等に係る役務の提供などです。

免税取引のリスク

消費税の申告での免税取引のリスクも、消費税の取引の判定を誤ることによる点で過大あるいは過少に申告・納付してしまう点です。

資産の譲渡等を受ける(対価を支払う)側からすれば、免税取引として消費税を支払っていない取引を、誤って課税取引(課税仕入れ)としてしまうと、預かった消費税から控除する消費税相当額が過大になり消費税を過少に申告・納付してしまいます。たとえば、国際電話の料金、輸入関連費用(免税分と課税分が混在しています)などです。先方の請求書等をしっかりチェックしましょう。

なお、申告書作成時のテクニカルな問題ですが、輸入消費税を申告書に記載する場合には10欄の「課税貨物に係る消費税額」は地方消費税相当額は除いた額を記載します。

いっぽう、資産の譲渡等を行う(対価を受け取る)側で、免税取引(輸出売上)を課税取引(課税売上)として判定ミスや帳簿入力上のミスをしてしまうと、過大に消費税を申告・納付してしまいます。

さらにリスクが高いことがあります。

申告それ自体に重要な影響を与えるリスクです。

納税義務があるかないかの判定のリスク

事業を行う者は、消費税の納税義務があります。ただし、一定の要件に該当する場合には、消費税の納税義務が免除されます。

まず、基準期間または特定期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は消費税の納税義務が免除されます。

重要なのは、この基準期間または特定期間の課税売上高には、免税取引である輸出売上高も含まれるということです。

そもそも国外取引として消費税の対象でない取引を免税取引(輸出売上)としてしまうと、この売上高は「基準期間(特定期間)の課税売上高」に含まれるため、免税取引としたために本来ならば納税義務が免除されるのに消費税の申告・納付を行ってしまいます。あるいは、消費税の申告により消費税の還付を受けていたところ、本来ならば納税義務が免除されていたとして還付が否認されてしまうこともあります(消費税課税事業者選択届出書を提出していない場合)。

簡易課税制度が適用されるかどうかのリスク

基準期間の課税売上高は、消費税の納税義務が免除されるかどうかの判定のほかに、簡易課税制度が適用されるかどうかの判定にも利用されます。

簡易課税制度の適用を選択している場合に、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合には当事業年度(当年)は簡易課税制度が適用されることになり、逆に、基準期間の課税売上高が5,000万円を超える場合には、簡易課税制度の適用を選択していても当事業年度(当年)は簡易課税制度ではなく一般課税により申告しなければなりません。このため、(輸出)免税売上高の把握・集計のミスにより、申告内容が変わったり、届出書の提出の判断を誤ることになります。

課税売上割合の算定のリスク

課税売上割合は、課税期間の総売上高に占める課税売上高の割合をいいます。

非課税売上高が大きいと、課税売上割合が低くなりますが、課税売上割合が95%未満の場合では、支払った消費税の全額を預かった消費税から差し引くことができません(課税売上割合が95%以上でも課税売上高5億円を超える場合には同様です。なお、簡易課税制度が適用される場合には課税売上割合は関係ありません。)。

このため、非課税売上高の把握や集計に注意を払うことになりますが、実は、免税取引(輸出売上高)も重要なのです。

課税売上割合の算定にあたっては、分母である総売上高にも、分子である課税売上高にも、ともに(輸出)免税売上高も含めるのです。

分母も分子にも算入されるので直感的には大勢に影響なさそうですが、実際に試算してみると課税売上割合に重大な影響を与えることがわかるはずです。とくに、輸出売上高が大きい場合や、課税売上高が5億円以下の場合で課税売上割合が95%前後の場合には注意すべきです。

( おわり )