非上場株式の税務上の評価における少数株主かどうかの判定

非上場株式の税務上の評価というと、とかく会社区分の話とか、評価方法の話とかが中心となってしまいます。

しかし、会社区分よりも前に重要なのは、株主判定です。

( 1 )同じ株式なのにふたつの株価

株式の譲渡は会社の支配権の異動であり、これは売買価格を決める場合でも重要なポイントとなります。買主となる者が株式の取得によって議決権の占める割合の過半数や2/3に達する場合は、会社支配に重要な意味を持つため、売買価格は高くなります。 逆に、買主となる者が株式を取得してもさして経営に重要な影響を及ぼさない少数株主にとどまる場合は、株式の価値はもっぱら配当請求権部分に限定されるため、売買価格も低くなります。

このように、同じ株式、同じ株数であっても、売買後の買主の経営への影響力いかんよって株式の価値は大きく異なります。

非上場株式の売買価格(株価)を決定する際、税法のルールで株価を算定することも少なくありませんが、税法のルールでも、会社の株主構成や支配力によって算定される株価が大きく異なります。

( 2 )会社の評価の前に株主判定

財産評価基本通達では、株式を取得した者について、株式取得後の会社の株主構成や取得者の株主としての地位や経営への影響力の状況によって、株式の評価額が大きく異なります。

議決権の保有が少なく、経営への影響力が小さい株主が取得した株式の評価は、通常は低く評価されうる株価(特例的評価方式=配当還元方式による評価額)が適用されます。

株式の評価というと、ついつい「会社区分」だとか「類似業種比準価額」だとかすぐそちらに話が行ってしまいますし、そのテの専門書のそこに大量の紙数が割かれていますが、実はそれ以前の会社の株主判定のほうがよっぽど重要なのです。

( 3 )同族株主の判定

財産評価基本通達によれば、議決権の保有が少なく、経営への影響力が小さい株主が取得した株式の評価は、通常は低く評価されうる株価(特例的評価方式=配当還元方式による評価額)が適用されます。

「同族株主のいる会社の株式のうち、同族株主以外の株主の取得した株式」が該当します。

同族株主の単位(株主グループ)は、民法上の親族のみならず、その関係者(同族関係者)、それらに支配される会社も含まれます。 議決権比率30%以上の株主グループを構成する株主は同族株主となりますが、同50%超の株主グループがある場合には、同族株主に該当しません。 株主グループのいずれもが30%未満である場合には、「同族株主のいない会社」となります。

「株主等」「同族関係者」などの用語や親族の範囲について押さえなければなりません。

( 4 )中心的な同族株主がいる場合の判定

財産評価基本通達によれば、議決権の保有が少なく、経営への影響力が小さい株主が取得した株式の評価は、通常は低く評価されうる株価(特例的評価方式=配当還元方式による評価額)が適用されます。

「中心的な同族株主のいる会社の株主のうち、中心的な同族株主以外の同族株主で、その者の株式取得後の議決権の数がその会社の議決権総数の5%未満であるもの(会社の役員または役員となる者を除きます。)の取得した株式」が該当します。

( 5 )同族株主のいない会社での判定

「同族株主のいない会社の株主のうち、課税時期において株主の1人およびその同族関係者の有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の15%未満である場合におけるその株主の取得した株式」「中心的な株主がおり、かつ、同族株主のいない会社の株主のうち、課税時期において株主の1人およびその同族関係者の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の15%以上である場合におけるその株主で、その者の株式取得後の議決権の数がその会社の議決権総数の5%未満であるもの(会社の役員または役員となる者を除きます。)の取得した株式」が該当します。