( 4 )不動産投資の成否を判断するためのキャッシュ・フローとは

不動産投資の成否は、その不動産を売却(投下資本回収)した後で当初からどれだけおカネが増えたのかどうかにあります。

だとすると、不動産投資の成否の判断は、所得税を計算するルールで行われた不動産の損益によってではなく、まさにキャッシュの増減によってなされなければなりません。

今回は、不動産投資の成否を判断するためのキャッシュ・フロー情報の内容についてコメントいたします。

キャッシュ・フロー情報を作成するポイント

不動産投資の成否は、その不動産を売却(投下資本回収)した後で当初からどれだけおカネが増えたのかどうかにあります。

その点で、不動産投資の成否の判断は、所得税を計算するルールで行われた不動産の損益によってではなく、まさにキャッシュの増減で行われなければなりません。よって、必要なのは損益情報ではなくキャッシュ・フロー情報となります。

私は、不動産投資の成否を判断するためのキャッシュ・フロー情報を作成するポイントは次のふたつに尽きると考えます。

  • 期間計算から開放されていかに柔軟に臨むか
  • 確定申告で利用した不動産所得の会計情報をいかに活用するか、活用できるように会計情報を作るか

ここでの目的は、各年の不動産損益を把握することでもなく、税金の計算を正しく行うことでもなく、あくまで「不動産投資の成否を判断するための情報を作ること」です。

目的が違うのですから当然です。

「税金バカ」「会計バカ」になって、けっきょく何のための情報なのかわからないマスターベーションでは意味がないのです。

いっぽうで、不動産所得の会計情報を作っているわけですから、計算経済性の点からとことん活用していきます。

この点で、会計情報をいかに変換していくかが重要となりますが、逆に、会計情報もただ税金を正しく計算できればいいというのではなく、キャッシュ・フロー情報をつかめるような会計情報を作るようにする必要があります。

(おさらい)不動産投資の損益分岐点

前回申し上げましたが、私の場合、損益分岐点の売却額は次のように算定しています。

  • 初期投資(不動産取得時)における自己資金支出額を捉えます。
  • 投資後のキャッシュ・フローの累計額を集計します。
  • 想定される売却時点における債務(前受家賃や敷金や借入金の残高)を算定します。
  • 初期の自己資金支出額(マイナス)から投資後のキャッシュ・フロー累計額(通常プラス)を合計した金額に、想定される売却時点における債務(敷金や借入金残高)を合計した額が、想定される売却時点における損益分岐点売却額となります。

これらの情報は、損益の情報ではなくキャッシュの情報です。

しかも、「一定期間ごとの結果」というよりも、「(投資後の)累計としての結果」が重要となります。

「期間計算からの開放」の具体例

初期投資の額の算定

上記のとおり、不動産投資の成否を判断するためのキャッシュ・フロー情報は、初期投資(不動産取得時)における自己資金支出額を捉えることから始まります。

初期投資の額は、基本的には不動産の購入代価その他取得に関連する費用になりますが、初期投資の範囲が問題になります。

不動産の取得に伴う支出でも、所得税のルールで固定資産の取得価額に算入すべきもの(耐用年数にわたって必要経費となります。)と、取得時の必要経費として処理できるものがあります。また、不動産の取得に要した支出というと不動産取得税がありますが、不動産取得税は不動産取得時に支払うものではなく、年をまたぐこともあります。

ここで重要と考えられるのは、目的はあくまで「不動産投資の成否を判断するための情報を作ること」であり、その手段として、所得税の確定申告のために作成した会計情報(所得税のルールに従ったもの)をいかに流用できるかということです。

とするならば、初期投資の範囲は、所得税のルールで固定資産の取得価額となったものとするのが妥当と考えられます。

こう解しても、必要経費として処理されたものについては、上記の「投資後のキャッシュ・フローの累計額」に含まれ、最終的には合算されたところで投資の成否を判断しているため、結論は変わりません。

税金の発生と納税のタイミング

不動産投資の成否を判断するためのキャッシュ・フロー情報においては、投資後のキャッシュ・フローの累計額の集計がもっとも重要です。

ここで重要なのは、いわゆる「キャッシュ・フロー計算書」とは異なるということです。

一般に「キャッシュ・フロー計算書」は、ある時点(会計期間の期首)からある時点(会計期間の期末)までのキャッシュの動きを捉えたものです。

この点、税金は、算定期間と納付(キャッシュ流出)にズレが生じます。

所得税や消費税は、納税額の算定対象期間は1月1日から12月31日までの暦年ですが、この期間で、前年分の確定申告での納付額や当年分の予定納税(所得税)や中間納税(消費税)があり、納税額の算定対象期間と納付にズレが生じています。

固定資産税においても、分納の場合は、最終の第4期分は翌年が納期限となります。

住民税や事業税にいたっては、前年分の所得に基づいて税額が決定されるため、納税額の算定対象期間と納付が完全に1年遅れとなります。

ある時点(会計期間の期首)からある時点(会計期間の期末)までのキャッシュの動きを捉える一般的な「キャッシュ・フロー計算書」では、あくまでも期間内のキャッシュ・フローを計算するため、当然実際の納付の期間でのキャッシュの増減として反映されます。それはそれでよいのですが、期間によって分断されてしまいます。

しかし、不動産投資の成否を判断するためのキャッシュ・フロー情報では、個々の一定期間ごとの情報よりも、不動産投資後にキャッシュがどれだけ入り、どれだけ出たかという累計の情報を得ることが重要です。

また、当然といえば当然ですが、複数の物件を所有している場合でも、不動産所得の計算はすべての物件の合計額であり、税金も固定資産を除けばすべての物件の合計となります。

個々の物件ごとのキャッシュ・フローを算定するためには、期間計算にこだわって現実の納付のタイミングに固執するよりも、納税額の算定対象期間と納付額を一体として捉えたほうがわかりやすいといえます。

この意味で、キャッシュ・フローの中に発生主義的な要素を取り入れているかもしれません。

(つづく)