( 6 )問題集から始める学習法
名講義なるものを聴いて、感動し、できたつもりになっても、問題用紙に向き合うとパッタリ手が止まり、それが束の間の幻想だったと気づかされることも少なくありません。
だとすれば、テキストを理解してから問題集ではなく、いきなり問題集からはじめましょう。
地に足が着いた方法論
テキストを見て、なんとなく理解したつもりになって、例題や問題を解いたところ、まったく解けずに落ち込んで萎えてしまうことは、ものすごい秀才の方を除けば誰もが経験しているのではないでしょうか。
なにより、テキストを読んで一生懸命に時間をかけて理解しようとがんばったはずなのに、まったく前に進んでいないのでないかという焦りが出てしまうのではないでしょうか。
勉強そのものがカイカンな場合は別として、試験は「問題に対して解答する」という営みなわけですから、どんなに知識があっても、問題に対して解答できなければあまり意味がないことになります。
逆に、ある論点や分野について理解が十分でなくても、問題に対して正答を書くことができれば、試験は合格するのです。
難関とされる試験であればあるほど、受験生はそれなり以上に努力をしています。合格レベルにある受験生ですら止まっているわけではなく常に進んでいるわけですから、それに追いつき追い越すことは容易ではありません。
しかも、時間は万人に平等に与えられているわけですから、精神論より方法論ということになります。
当たり前のことですが、勉強を始めた段階では大きく引き離されているわけですから、猛チャージが求められます。
着実に確実に実力を向上されなければなりません。
いきなり答えから見てしまう勉強
「勉強は嫌い」「時間をムダにしたくない」「確実に実力をつけたい」「試験は問題解けてナンボ」
私は、最初にテキストや基本書や参考書は読みません。いきなり問題集を見てしまいます。
「そんなことしたって解けるわけないだろう!」
ごもっともでございます。
「解く」とは申し上げておりません。だいいち、解けるはずがありません。
「設問」と「解答と解説」を見比べながら読むのです。 「こういう問題が出るのか」「そういうもんなのね」それで十分だと思います。
ほとんど理解できないでしょうし、なんとなくアタマに入ったとしてもその大半はほどなく飛んでしまうと思います。
ただ、とにかく読み進めて最後まで到達します。「何日完成」とかは一切無視、1日あるいは数時間をめざしてがんばりましょう。
いま解いたら1問すら解くことができないはずの実力なのに、なんとなく最初から最後まで読むと気分は悪くないはずです。達成感すらわいてきます。
とにかく最後まで到達する目的は、この精神的な満足を得るためだけではありません。科目によっては、全体像をつかんだほうが理解がしやすいもの、むしろ、全体像をつかまないと理解できないものが少なくないからです。たしかに、そのときそのときを完璧にしながら積み上げていくアプローチも効率的ですが、いきなりすべてを理解するのは困難ですし相当なストレスを伴うのではないでしょうか。そういう意味では、とにかく突き進むことをおすすめします。
手を動かします。
一回りしたら、二回り目です。ここから真剣に・・・というところですが、それでも問題を見たらすぐに解答解説を見るようにしています。
中途半端な理解で、中途半端な判断で解答してしまおうとすると、「ヘンなクセ」がついてしまうからです。このクセを矯正するのはなかなかむずかしいものです。
ただし、今度は、自分の手を動かします。解答や解説を見ながらでいいんです。自分の手で模範解答を書いてみます。要はインプットとアウトプットを同時にやって時間を稼ごうという作戦です。
試験は、解答用紙に正答を書き込むことではじめて合格が得られますす。
例えば、アタマではわかっていても、正しく漢字で解答用紙に書けなければ、正しいスペルで解答用紙に書けなければ、わかっていないことと同じになってしまいます。
ケアレスミスは必ず起こります。これを防ぐためにも必要です。問題用紙の数字の見間違い、下書き用紙への数字の書き写し間違い、電卓の叩き間違い、解答用紙への記入間違いなど、「地雷」はたくさんあります。
論文問題などでは、模範解答を手で書いて覚えておけば、アタマでド忘れしても、手が覚えていることもあるからです。 先ほども申し上げましたが、理解は十分でなくてもそれなりに書けたほうが絶対に有利なのです。
私の場合は、さっき解答と解説を読んだにもかかわらず、全然できません。
電車の中ではアタマではわかったつもりでいたのに、紙に書こうとしてもまったく手が動かないのです。解説を見ながらやっても、制限時間1時間の問題が3時間とか4時間かかってしまうのです。
でも、現実を受け止めるしかありません。ここからが勝負です。何度も何度もくりかえすのです。
そのうち、解説を見なくても、自力でなんとかできるようになり、制限時間内にできるようになっていきます。
いつしか解答マシーンとなって15分くらいで終了できるようになります。試験場ではただでさえ緊張しているわけで、そこで考えることは少なくしてあとはいつもの自分を信じてマシーンに徹することは重要だと思われます。
このレベルで考えなければいけないのは、すでに解答など覚えているわけです。重要なのは、「解説と同じようにアタマが動いているか」という点です。たとえば、「選択肢の絞り方が解説どおりになっているか」をチェックするのです。
タテ展開とヨコ展開
問題集中心の最大のメリットは、試験が問題と解答という営みである以上、足が地についているということです。一方で、なかなか十分理解することが難しいことがあります。
そこではじめて、テキストなり参考書なり基本書に目を通します。問題集に書いてある解説の意味がわからないためにテキスト等を見るという「タテへの展開」です。ただし、タテへの展開は、ともすれば試験に出ないようなところまで深入りしたりするため、そのリスクを意識することが大切だと思います。
いっぽうで、同じテーマの問題を複数解くことによって、あるいは、同じような問題でも別の問題集の解説を読んだらわかりやすかったということも多々あります。この「ヨコ展開」は非常に重要だと思います。
とくに、合格体験記などで強く推されている書籍だと、ついつい「それに絞って」ひたすら回転する傾向がありますが、ほかの問題集で同様の問題を解いたり解説を読むことでよく理解でき、立ち止まってしまい悶々としてしまう時間を節約できるはずです。
とくに計算問題などは、いろいろなパターンの問題に触れて、その解説を読むことで、ものすごく理解が深まり、自分の誤解や思い込みも解消するはずです。
( つづく )