( 8 )得意科目の落とし穴

得意科目を持っていることは有利であることには間違いないですが、「得意科目で点を稼ぐ」と得意科目で高得点を狙いすぎるのは危険です。不得意科目や不得意分野の克服にそのエネルギーを注ぎましょう。

得意科目の危険性

得意科目があると、他の受験生より有利であることは間違いないと思われます。

他の受験生がよりエネルギーを注がなければならないのに、さほどエネルギーを使わずに高得点を狙えるからです。

私もかつて得意科目がありまして、全国模試の成績優秀者で名前が載るなんて当たり前、1位でないと自分に腹が立つということがありました。

大きな過ちだったのは、得意科目でより点数を稼ごうとしたのです。

70点が合格ラインだとすると、70点を80点に上乗せ、80点を90点に上乗せ、90点を95点に上乗せしようとすると、どんどんこなす範囲が広がります。つまり、試験にあまり出ないところでもやろうとしてしまうのです。

恐ろしいのは、それにものすごい時間やエネルギーを使っても、得意科目だけに苦痛を感じないのです。

冷めた目で見ると、試験に出るか出ないかわからないところまでやるなんて愚かなことなのですが、本人からすると、得意科目ゆえに苦痛を感じないのでどんどんはまってしまうのです。

アドバンテージの埋没

得意科目がある場合、本試験で難問ばかりが出題されたときは、非常にアドバンテージがあります。

他の(合格ラインにいる)受験生が50点取るのがやっとのところで、90点取れるのなら合格に大きく近づきます。

しかし、本試験で易しい問題が出題されたときは、一挙にアドバンテージは埋没してしまいます。

たとえ、98点取ったとしても、他の(合格ラインにいる)受験生も90点近く取っていたとしたら、アドバンテージはあまりなくなってしまいます。

ここで、不得意科目がちょっと難しかった場合には、不合格になる可能性がにわかに高まってしまいます。

「得意科目の高得点で差をつけて不得意科目を補う」という戦略が失敗したことを本試験中に悟ることになり、その精神的ダメージからさらに厳しい状況になってしまうのです。

不得意科目克服が大切

得意科目の得点レベルを90点から95点に高めることは、多くの時間とそれなりのエネルギーを注ぎますが、得意科目だけに苦になりません。

いっぽう、不得意科目の得点レベルを50点から75点に高めることは、不得意だけに非常に苦痛を伴います。しかし、合格ラインに達するために努力することで、本試験で出題される可能性が高いところで得点できるだけではなく、難問が出題されてもお手上げではなくなんとか点を拾って他の(合格ラインにある受験生)に差をつけられないようにできるのです。

得意科目は得意科目として高得点狙いでいくとしても、ある程度のところでやめておくガマンが大切です。深追いは禁物です。不得意科目を合格ラインに乗せる方がより合格に近づくのです。

逆説的ですが、得意科目がないほうが、バランスよく学習することになるので、かえって合格する可能性が高いのかもしれません。

( つづく )