粉飾決算からのリカバリー

「粉飾決算を見破る方法」的なものは反吐が出るほどあふれていますが、それはそれとして、粉飾決算をどう正常化していくかについてはあまりないように思われます。

望むにせよ、望まないにせよ、いったん粉飾決算を行ってしまうと、その粉飾部分を精算するのは容易ではありません。

( 1 )粉飾決算の本当のオソろしさ

粉飾決算の恐ろしいところ、それは、粉飾決算がバレることではありません。粉飾していない「すっぴん」がわからなくなってしまうこと、そして、「お化粧」を落とそうとしても落とせないことです。

( 2 )売上高粉飾への道と一片のモラル

ルールを外れる以前に、ルールの範囲内でできることを徹底的にすべきです。 徹底的に会計基準を分析検討し、理論構成・理論武装と、それを裏付ける事実を検証可能な形で作り上げていくべきです。

売上高を不正に計上したら、いつかそれを損失として処理しなければなりません。

そのためには、何が正規の取引で、何が不正な取引なのかをキチンと特定し裏付けできる証拠を持っていなければなりません。

( 3 )売上高粉飾からのリカバリー

まずは実態の把握が肝要です。架空売上や先行売上が相当過去から常態化している場合、前期の数値だけのチェックでは足らないかもしれません。実は会社存続が危ぶまれるほどの状況かもしれません。

粉飾をすることそのものとか、粉飾を悪いことだとは思わないということよりも、粉飾していると思っていない、実態がわからないことのほうが恐ろしいことなのです。

過去のおかしな売上高の清算を一時に行うことができない場合、少しずつ減らす、つまり「償却」せざるをえないことになります。同時に、今期以降のおかしな売上高は可能な限り計上しないようにしなければなりません。

つまるところ、売上高の粉飾を清算・解消するためには、けっきょく正常な売上高を多く計上する、リアルな事業活動を改善・向上させることに尽きます。

( 4 )危機は粉飾清算の最大のチャンス

わかっちゃいるけどズルズル粉飾が積み重なっていくのはありがちなことです。

赤字にできないため処理することができず、そのまま長年経過してしまうのです。

過去、リーマンショックや東日本大震災直後において、決算が赤字となっても許される時期がありました。

今回のコロナ禍でも、もし赤字決算が許容されるならば、ぜひ財務リストラを行いましょう。

( 5 )帳簿精査の準備としての決算センスの見極め

粉飾ポイントを具体的に発見し特定する業務をしばしば依頼されるのですが、決算書見るだけでインチキ臭プンプンなのによく銀行はおカネ貸すよなと感じることが少なくありません。ノルマが大変なんですね。

私の場合、比率分析だとか前期比較とかそんなお行儀のよいことではなく、会計データを入手してガッツリチェックするのですが、まずは前提として法人税申告書(と決算書類)を入手しています。

それは誰でもやっていることですが、決算書によって会社や会計事務所のセンスがわかるため、正しいか正しくないかのチェックの前にまずは決算書のセンスを見極めています。

( 6 )粉飾特定のための帳簿精査のあらまし

粉飾ポイントを具体的に発見し特定する帳簿精査についてコメントいたします。

私の場合、仕訳データ(仕訳日記帳)をソフトからエクスポートし、補助科目ごとの合計残高試算表の月次推移で着眼点を見いだし、直前期末の貸借対照表残高のその後の動きを調査することころから出発しています。

( 7 )「仮払金」の後始末 Part1 不健全な仮払金

仮払金といっても、本当に厄介なのは「仮払金」「立替金」という名の実質的な貸付金です。

このような不健全な仮払金は後始末に困りますが、まずは、なぜこのような仮払金が発生してしまうのか、なぜ貸付金にできないのかについて検討します。

( 8 )「仮払金」の後始末 Part2 仮払金ほったらかしとそのリスク

決算書上は仮払金となっていても、いつまでも精算が終わらない実質的な貸付金がある会社もあります。貸付金とできない事情については前回申し上げました。

今回は、ほったらかし続けた場合のリスクについて検討します。