( 2 )活動把握と締め日の整理

ソフトウェアの原価計算は、結果的には労務費計算となります。

つまり、営業部門や一般管理部門ならば、給料や賞与や法定福利費などで終わってしまうものが、売上原価(棚卸資産)になったり、固定資産になったり、研究開発費になったりするのです。これらの区分を正確に行うためには、いつからいつの間にどの従業員等がどんな作業をしていたのかを把握していなければなりません。

しかし、いきなり完璧にやるのは非現実的です。一歩一歩精度を上げていきましょう。

事業年度中の活動を把握する

ある企業で、ソフトウェア固定資産の計上について、開発部門の人件費を単純に四半期ごとに集計してひとつの固定資産としていました。はたして、企業の活動が四半期ごとにキッチリ行われるということがありうるでしょうか。

企業のすべての活動が、毎月1日から月末日まで行われているわけではありません。月の途中から始まったり、月の途中で作業が完了することもあるわけです。

そもそも原価計算は、実際に行われた活動を数量的に測定してはじめて意味を持つのであって、実際の活動とは無関係な集計をしたところでその結果が有益な意味をもつとは到底思えません。

活動時期の把握

まず、業務日誌等からいつからいつまでどんな活動をしていたのかを把握します。業務日報などが存在しない場合でも、社内メール等からおおよその活動内容は把握できるはずです。

ただし、確実に押さえておかなければならないのは、新製品の販売日です。これは外部との関係なので間違えてはなりません。これにともなって、その前提となる新製品の完成の日もほぼ特定することができるはずです。

何月から何月の中頃までにナニナニの研究、何月の上旬から何月の上旬までナニナニのバージョンアップ版の開発、何月から何月までに新製品の開発・・・複数のプロジェクトが同時並行で行われているはずです。これによって、事業年度中にどんな活動が行われたのかを把握します。

担当者の把握

ついで、それぞれの活動について誰と誰が担当していたのかをざっくり把握します。

ひとりのエンジニアが同時並行的に複数の作業を行っているほうがむしろ当たり前といえるでしょう。だからといって、最初から把握することを放棄してしまっては意味がありません。なぜなら、給与ベースがそれぞれ違うのに、全体の金額でザックリ切ってしまうと、やはり妥当な結果は出てこないからです。

消去法的なアプローチでもいいので、誰と誰がこの時期にやっていたとか、何月は誰がやっていたが何月になったら他のプロジェクトを始めたので代わりに誰かと誰かが入ったとかをおよそまとめます。

人件費の計上を月末締めにする

エンジニアの活動を把握したらすぐに集計に入りそうですが、ここで焦ってはいけません。

地ならしが必要です。

ずばり、人件費をキチンと経理上で月末ベースにすることです。

給料の締め日と支払日は各企業によってさまざまです。20日締めで25日払い、15日締めで20日払い、月末締めで翌月5日払いなどさまざまです。

いっぽうで、経理上の人件費(給料)の計上は、おおむね次のようになると思われます。

  • 未払金計上は行わず支払時に計上する
  • 給料締め日に未払金として計上する
  • 給料締め日に未払金として計上し、給料締め日が月末日でない場合には、決算時に、給料締め日から月末日までの人件費(締め後人件費)を未払金に計上する
  • 給料締め日に未払金として計上し、締め後人件費を月次ベースで未払金に計上する

実態としては、 1. の方法で支払日ベースで計上している企業が多いのではないでしょうか。 この処理を妥当とする説得力ある根拠として、「月々の人件費の計上は固定給部分が多いため、そんなに月々で大幅に変動しないから」という計算経済性があります。

また、 2. の方法で、給料締め日から月末日までの人件費はまったく考慮しないというケースも多々あります。この理由も、やはり計算経済性が大きいと思われます。もっとも、この「締め後の人件費」については、月次ベースでは無視して決算時のみ計上するという 3. の方法があります。これならば、期中処理の計算経済性を確保しつつ、決算処理でつじつまを合わせることができるため合理的な方法といえます。

少なくとも前回よりも一歩ましな原価計算をしようとするならば、 3. の方法からはじめることをオススメします。

しかし、ソフトウェア原価計算をより正確にしようとするならば、ぜひ 4. の方法を採用すべきです。

なぜなら、ソフトウェア原価計算の中心は、少なくともエンジニアの活動を忠実に金額ベースで測定することにあるからです。そのためには、エンジニアの活動(最終的には時間で測定されます)と人件費がキチンと結びついていなければなりません。個々のエンジニアの活動は会計に合わせて月ベース(月初めから月末日)で把握し、その精度がものすごく高いものであっても、もし人件費は給料の締め日ベースで集計されていたとしたら、集計期間がズレている二つのデータを結び付けたところで、有用な結果が導き出されるでしょうか。

個々のエンジニアベースではものすごい細かい管理や集計を強いながら、部門ベースではユルい集計となってしまい、全社ベースではさらにユルい配賦などが行われていたら、各エンジニアの情報が十分に活かされていないことになります。

このテの問題は、原価計算に限らないことではございますが・・・

( つづく )