( 6 )作業内容の区分や配分
原価計算は、各月に発生した各従業員の給料等の金額を、作業時間を基準に各月における作業内容ごとに配賦する作業です。
その基礎資料は、基本的には日報(タイムシート)をベースにして月単位で集計したものを利用することになると考えられます。
タイムシートの内容については、少なくとも会計上の目的としては、基本的にどういう作業を何時間やっていたかで足りると考えられます。
「どういう作業か」について会計上で重要なのは、当期の費用となる部分と当期の費用とならない(資産計上)する部分を分けることです。
作業時間の把握は、基本的には日報をベースにして月単位で集計したものを利用することになると考えられますが、原価計算の精度を上げようとすると、会計上の処理の差が生じる時点(製品マスター完成時など)の把握や、残業手当や休日手当が付与される時間帯に作業した場合の把握が必要になります。
作業内容の区分について
作業内容の集計と計測のポイントについては「こちら」です。
作業時間の把握は、基本的には日報(タイムシート)をベースにして月単位で集計したものを利用することになると考えられます
タイムシートの内容については、人事考課目的などならともかく、会計上の目的としては、基本的にどういう作業を何時間やっていたかで足りると考えられます。
「どういう作業か」について会計上で重要なのは、当期の費用となる部分と当期の費用とならない(資産計上)する部分を分けることです。すなわち、会計の表示項目の違い(研究開発費か製造費用(売上原価)か一般管理費か)よりも、当期の費用になるのかならないのかの区分が重要です。
既存製品であっても、現行バージョンのメンテナンスなのか新バージョンの制作なのか、新バージョンの制作といってもマイナーなものなのかメジャーなものなのかによって会計上の判断が異なります。既存製品が複数である場合にはなおさらです。
ただ、当初の判断と事後的な判断が異なることも少なくないため、ついつい作業内容を細かく分けて従業員に報告してもらいがちです。しかし、細かくなればなるほど作業を実際に行う従業員の入力ミス等によりデータそのものの信頼性があやうくなることも考えられます。
このため、実際に従業員に報告してもらう作業内容の区分はできるかぎりシンプルにして、会計上ポイントとなる部分は別途インタビュー等により調整する方法も有効と考えられます。
作業時間について
原価計算は、各月に発生した各従業員の給料等の金額を、作業時間を基準に各月における作業内容ごとに配賦する作業です。
そのためには、各従業員が行った作業内容ごとの月間の作業時間合計を集計します。
月間の作業時間は基本的には日報(タイムシート)を合計したものといえます。
なお、より厳密に原価計算を行おうとする場合には、時間外手当、残業手当や休日手当などが生じる時間帯の作業及び作業時間は別途に把握すべきです。
なぜなら、これらの作業には割増賃金が発生するため、同じ作業でも他の時間帯よりも原価がより発生しているからです。これらを分離しないと、他の作業に係る原価に食い込みが生じるなどの問題が発生して原価計算にゆがみが生じるからです。このため、割増賃金額とこれらの作業内容と作業時間は別途に把握する必要があります。
実作業時間とその配分にかかわる問題点
賃率について
時給制でない固定給の場合には、月によって実働日数が異なるため、固定給を出勤日数で割った賃率は毎月異なることになります。まして、有給休暇を取得している場合にはさらに差が生じることになります。なお、ここでの議論はいわゆる割増賃金の算定方法とは別の論点であることにご注意ください。
たとえば割増賃金の算定基礎となる時給のように一定の時給を賃率として設定しこれに作業時間を乗じても、実際に支払われるのは固定給に時間外手当等を加算した金額です。このため、差が生じることになります。
結局は、各従業員について毎月発生した給料(締め日が異なる場合には調整後)をその月の実際作業時間で除して各作業に配分する方法が妥当ということになります。
時間外手当や休日手当等の割増賃金が発生する場合
より厳密に計算しようとすれば、時間外手当や休日手当等が発生する場合には、その手当の額と作業時間を除いたところで配分します。金額面でも時間面でも、これらを分離しないと適切な算定ができないからです。
この点、専門業務型裁量労働制を採用し、あらかじめ労使協定で時間外手当が設定されている場合には、特に分離する必要はないと思われます。もっとも、専門業務型裁量労働制であっても、深夜手当や休日手当は発生するので、これらに係る割増賃金と作業時間は別途把握する必要があります。
「サービス残業」「サービス出勤」の問題
ここで悩ましいのが、時間だけでみれば時間外手当や休日手当等が発生するはずなのに、実際の支給がない「サービス残業」「サービス出勤」の問題です。
このような場合、時間外手当などが発生する作業時間に対する割増賃金が生じないため、これらの時間が多ければ多いほど月額の給料を作業時間で除した値(賃率)は低いものとなります。
このため、給料は一定の固定給であるため、同じ作業内容なのに「サービス残業」等が少ない月は原価は高く、多い月は原価が低くなるという事態が生じます。
そこで、あくまでも理論上ですが、たとえば、次のような方法も考えられなくもありません。
まず、その月の固定給をその月の通常の就業時間で除した値を賃率とし、これに通常の就業時間帯の作業時間を乗じた額をもって各作業の原価とします。次に、本来ならば時間外手当や休日手当が発生すると考えられる時間帯の作業については法令上の割増賃金の算定式による賃率に当該時間帯における作業時間を乗じます。これと実際の支給額との差額は未払金として負債計上し、特別法である労働基準法上の時効( 2 年)が生じたときに債務消滅益を計上する方法です。
なお、専門業務型裁量労働制の場合には、どんなに長時間勤務していたとしても、深夜や休日等に該当しないかぎりみなし労働時間が適用されます(逆に、どんなに短い時間の勤務であっても欠勤等にはなりません)。このため、裁量労働制が適用されている従業員の場合には、月によって賃率が大きく異なることはただちに不合理とはいえないと考えられます。ただし、会計上資産となる部分については別途調整するという考え方もあると思われます。たとえば、会計上資産となる部分については、固定給をみなし労働時間で除した賃率をもって実際の作業時間を乗じた額とし、残余の費用となる部分については一定の基準で研究開発費や製造費用(売上原価)や一般管理費に区分する方法などです。
( つづく )