( 2 )銀行口座取引情報どおりに入力

仕訳の入力のたびに会計ソフトの科目設定で補助科目などをどんどん設定していきます。

銀行口座取引情報(通帳)に記載されている金額どおりに仕訳処理を行います。ただし、振込みの場合の振込金額と振込手数料や借入金返済の場合の元本返済額と支払利息などのように密接に関連した取引はひとつの仕訳とすべきです。

取引の細かい内容は後で調べることにして、とりあえずは銀行口座取引情報(通帳)通りの入力を行うことに集中します。

当座預金の場合でも、銀行口座取引情報(当座照合表)どおりに入力するほうが結果として効率的です。

いわゆるインターネットバンキングの一般化により、取引情報から自動仕訳したり、csvファイルでダウンロードして使うことが当たり前になりつつあり、通帳を目で見て打ち込むという作業はもはや前時代的といっていいでしょう。

銀行口座取引情報どおりに入力

会計帳簿の基本はやはり資金の動きであり、ここを「幹」としてしっかりと固め、これに会計理論的な「枝葉」を付けていくほうが地に足が付いているからです。

事前準備

まずは、どのくらいの銀行口座があるのか、当座預金口座があるのか、あるとして小切手取引、手形取引の状況はどうか・・・などです。

それに応じて預金種類ごとに勘定科目、そして銀行口座ごとの補助科目を設定します。

私の場合、前期の決算書があるときには、これを入手し、貸借対照表や損益計算書を見てその会社特有の勘定科目を入力し、勘定科目の内訳を見て、補助科目をあらかた設定してしまいます。

会計ソフトでは自動的に銀行取引情報から仕訳を生成する機能もありますが、結局勘定科目情報や補助科目情報をどう設定するか、デフォルト(標準)の仕訳をどう設定するかに、まさに設定者のセンス・能力が露呈するところといえます。

入力の概要

そうしたら、銀行口座取引情報(預金通帳や当座照合表)どおりに仕訳を入力していきます。

銀行口座取引情報(通帳や当座照合表)は、左に出金、右に入金ですが、これを、左に入金(要するに借方)、右に出金(要するに貸方)として、ガンガン入力していきます。まさしく鏡のように・・

実務的には、各銀行のインターネットバンキングから各口座の取引情報をcsvファイルでダウンロードし、その数値をひたすらコピー&ペーストします。右クリックなんてしている場合ではありません。「Ctrl」と「C」、そして、「Ctrl」と「V」です。

銀行口座取引情報には残高が記載されているので、数字の入力ミスも発見しやすいです。

なお、入力金額や出金金額については、「銀行口座取引情報に記載されている入金額や出金額」ととりあえず一致させるほうが望ましいです。たしかに、借入金の元利返済や総合振込みなど複数の取引がまとまっていることもありますが、少なくとも最初の段階ではいちいち立ち止まらずとりあえず通帳通りの金額を入力すべきです

とりあえず預金勘定の相手科目は多少ラフでもかまいません。あとでいくらでも修正できます。

この段階での相手科目について注意すべき点があります。

相手科目について本当に不明な場合には仮払金a/cや仮受金a/cを用いることになりますが、ある程度わかるときはそれなりの科目(売掛金a/cや買掛金a/c未払金a/cなど)で入力するほうがベターです。

ただし、それなりの科目で入力すると、ついチェック漏れとなってしまい「それなりのままでフィニッシュ」となってしまうことです。 自信がなければ、あえて相手科目を仮払金a/cや仮受金a/cにして突き進みましょう。最終的にこれらの科目の残高がゼロになればいいのです。

また、会計ソフトへの入力方式は、元帳形式や出納帳形式や伝票形式などいろいろあります。最終的には振替伝票に仕訳を直接修正することになりますが、とりあえずは、もっとも早く入力できる方式を採用すべきでしょう。そして、あとで振替伝票に変更することになります。

一般論的には、出納帳形式や元帳形式による「1行仕訳」が早いと思われます。つまり、「科目1つで金額1つ」の「1行と1行の仕訳」です。

銀行口座取引情報に記載されている金額どおり1行ずつそのまま入力していくことになりますが、「通帳の1行上の支払い(振込み)と関連している振込手数料」「借入金の元本と利息の支払い」など、通帳上は2つの数字が表記されていても密接に関連している場合には、振替伝票によってひとつの仕訳として入力すべきです。

入金の処理

なんとなく売上代金の入金と思われる場合

売上代金の入金かどうかは、数月にわたって常に入金があったりすること等で判断します。

とはいえ、判断が間違えてもまったく気にすることはありません。

相手先については、入力のたびに会計ソフトの科目設定で売掛金a/cの補助科目を追加していきましょう。

A銀行の普通預金口座に、B社からの振込入金があったものとします。

各月同時期に入金があることから、B社は得意先と判断したとします。

まず、普通預金a/cに補助科目「A銀行」を設定します。なお、A銀行に複数の普通預金口座を有している場合には、口座ごとに適切な名称を付して補助科目を追加していきます。

次に、おそらく得意先であろうB社について、売掛金a/cに補助科目「B社」を設定します。

(借) 普通預金(A銀行) XXX (貸) 売掛金(B社) XXX

なお、「B社は振込手数料を差し引いて振り込んできたから、B社に出した請求書を確認しようか」などはとりあえず先送りします。

とにかくまずは、通帳をそのまま入力することにエネルギーを集中します。

何の入金かすぐには判断できない場合

(借) 普通預金(A銀行) XXX (貸) 仮受金 XXX

何の入金かわからないものとしては、手形や小切手が資金化したものかもしれませんし、資産等の売却によるイレギュラーな入金であるかもしれませんし、単純な預金振替や現金を預入れしただけかもしれません。

また、入金元はわかっていても内訳がよくわからないものがあります。たとえば、融資による借入金入金の場合、先に収入印紙代や最初の利息などが差し引かれて入金していたり、手数料相当額が差し引かれたファクタリング等の入金などがあります。

しかし、細かい検証は後回しで、とにかく銀行口座取引情報と残高を合わせながら突き進みます。

補足

通帳の記載からして内容が明らかにわかる入金としては利息の入金や配当金の受取りなどがあります。

預金利息の受取りについては勘定科目は決まっているので、仮受金にはせずに受取利息a/cで仕訳します。

(借) 普通預金(A銀行) XX (貸) 受取利息 XX

実は、預金の利息は税金が差し引かれて入金しています。具体的には、預金利息に対して15%の所得税、0.315%の復興特別所得税が源泉徴収されています。

最終的には仕訳を修正しなければならないのですが、ここはとりあえず入金額のみ仕訳処理します。

配当金の受取りについても勘定科目は決まっているので、仮受金にはせずに受取配当金a/cで仕訳します。

(借) 普通預金(A銀行) XX (貸) 受取配当金 XX

配当金にも税金が差し引かれて入金しています。具体的には、上場株式の配当には15%の所得税、0.315%の復興特別所得税が源泉徴収され、上場株式以外の配当には20%の所得税及び0.42%の復興特別所得税が源泉徴収されて入金しています。

最終的には仕訳を修正しなければならないのですが、ここはとりあえず入金額のみ仕訳処理します。

出金の処理

なんとなく営業取引の支払いと思われる場合

営業取引の支払い、すなわち、通常の事業活動から生じる現金払い以外による支払いかどうかは、通帳で数月にわたって定期的なタイミングで出金があることなどで判断します。

とはいえ、この段階で判断が間違えてもまったく気にすることはありません。

支払先については、どんどんその都度買掛金a/cの未払金a/cの補助科目を設定していきましょう。

買掛金a/cがいいのか未払金a/cがいいのかはその時には判断が分かれるところですが、一般論としては売上に対する原価というように主たる営業取引に係る支払いについては買掛金a/c、それ以外はa/cという考え方がありますが、それもそのときは判断できないわけですから、とりあえずそのときの判断でよいと思います。

なお、保険料などやリース料(いわゆる費用処理する場合)など、毎月の金額が一致している場合には、あえて未払金a/cを使う必要がないと判断すれば、保険料a/cやリース料a/cを用いることになります。この判断については後ほど申し上げます。

さて、A銀行の普通預金口座に、C社への支払いがあったものとします。

各月同時期に出金があることから、C社は主たる営業取引に係る仕入先(買掛金a/cを用いる)と判断したとします。

おそらく仕入先であろうC社について、買掛金a/cに補助科目「C社」を設定します。

すでに、普通預金a/cに補助科目「A銀行」は設定されています。

(借) 買掛金(C社) XXX (貸) 普通預金(A銀行) XXX

ところで、振込みによる支払いの場合には、銀行口座取引情報上では支払額の1行下に振込手数料が記載されることが少なくありません。これらは、密接に関連しているので、1つの仕訳として処理すべきです。

(借) 買掛金(C社) XXX (貸) 普通預金(A銀行) XXX
支払手数料 X 普通預金(A銀行) X

借入金の返済と思われる場合

借入金の返済そして利息の支払いであろうことは、通帳から比較的簡単に予測がつきます。

複数の借入金がある場合には、それぞれの融資ごとに口座引き落としがあります。 そこで、借入金a/cと支払利息a/cにそれぞれ「銀行名」「とりあえずのマーク(数字や借入時期やアルファベットなど)」を補助科目登録します。

さらに、支払利息a/cにも同じ補助科目を登録するのがポイントです。もっといえば、融資に係る保証料がある場合にも、前払費用a/cや支払利息(保証料)a/cにも同じ補助科目名を登録することになります。

さて、借入金の元利額の引き落としについては、銀行口座取引情報の記載上、元本返済額と利息額がそれぞれ分けて記載されている場合と、元本返済額と利息額の合計額を通帳上は1つの合算数値として引き落とされている場合があります。

銀行口座取引情報の記載上、元本返済額と利息額がそれぞれ分けて記載されている場合でも、これらは密接に関連しているため、2つの仕訳ではなく1つの仕訳として処理すべきです。

(借) 借入金(A銀行1) XX (貸) 普通預金(A銀行) XX
支払利息(A銀行1) X 普通預金(A銀行) X

合算数値として引き落とされている場合には、とりあえず返済予定表を入手して、元本相当額がいくらなのかを確かめます。 利息の金額は毎月変動することになりますが、元本返済は基本的に毎月同じなので、差額が利息ということになります。

(借) 借入金(A銀行1) XX (貸) 普通預金(A銀行) XXX
支払利息(A銀行1) X

クレジット会社の決済である場合

ポイントとなるのがクレジットカードの利用料金の引き落としです。

カード決済の場合、通帳を見ただけでは支払先の内訳や支払の内容はわかりません。しかし、カード利用明細書をチェックしていると時間がありません。ここは通帳金額の仕訳入力に集中し、後で内容をチェックして仕訳を直接修正します。

さて、A銀行の普通預金口座に、クレジット会社D社の引き落としがあったものとします。この引き落としはカードの決済で、その内容は買掛金a/cではなく未払金a/cとします。

D社について、未払金a/cに補助科目「D社」を設定します。

(借) 未払金(D社) XXX (貸) 普通預金(A銀行) XXX

カード決済について、費用勘定を使わずに未払金a/cを使うのには理由があります

その後の作業で、請求書や領収書などをひたすら入力することになるのですが、その中には、法人カードで支払ったものも含まれているはずです。

カードでの支払いの場合には、まず店等から領収書のほかにカード利用のスリップが渡され、さらにカード会社からの利用明細書があります。 これらをすべて単純に費用処理してしまうと三重計上となり、さらに通帳の入力の段階で相手科目に費用勘定を使ってしまうと四重計上になってしまいます。

二重計上のチェックは最終的なチェックで行われますが、通帳入力の段階では費用勘定を使うのはやめましょう。

何の出金か判断できない場合

(借) 仮払金 XXX (貸) 普通預金(A銀行) XXX

何の出金かわからないものとしては、固定資産の購入等によるイレギュラーな出金であるかもしれませんし、単純な預金振替や現金を引出しただけかもしれません。

また、支払の内訳がよくわからないものがあります。 たとえば、一括振込みの場合には、例えば月末で大きな金額がドンと出金しているだけの場合は、支払先ごとの内訳は通帳を見ただけではわかりません。 また、事務所等の賃貸借に基づく最初の支払いも、敷金や保証金や日割り家賃等が合計されて支払われていて内容がわからないものがあります。

資料を見れば判明しますが、それは後回しで、とにかく通帳等と残高を合わせながら突き進みます。

当座預金の場合

当座照合表では、手形取引による入金や引き落としがあり、また割引による入金があるなど、照合表だけからはよくわからない入出金があります。

また、小切手の耳を見れば支払先はわかるのですが、ただちに支払いの内容までわかるとはかぎりません。

このような場合でも、いちいち立ち止まらずに、相手科目を「仮受金」「仮払金」にしてどんどん入力しましょう。

ところで・・・

当座預金の支払は小切手を切った日付で仕訳処理するのが教科書的です。たとえば、月末に小切手を切って相手に渡しても、その小切手が資金化されないかぎり、当座預金から支払額が引き落としになることはありません。そこで、取引と口座決済のタイミングがずれることによる「銀行預金調整表」の作成が簿記の試験ではお約束です。

しかし、いちいち銀行勘定調整表を作成したり、小切手の耳をいちいちチェックしたりしている時間はありません。小切手の耳を見ても取引の内容が判明しない場合もあるからです。

そこで、普通預金の通帳と同じように、当座照合表などに一致するように入力するほうがよいと思われます。

当座照合表の日付どおりにガンガン仕訳を切りましょう。小切手の耳を見ながらよりはるかに絶対効率的です。なにより、帳簿と当座照合表で残高が合えば安心感が違います

当座照合表には、資金化され決済された小切手番号などが記載されていますから、番号をあとでチェックして、未落小切手がないか確認します。そして、たとえば決算日以降の月の当座照合表で落ちている小切手を見て、それがいつ切った小切手かを見て、適宜仕訳を追加して、銀行勘定調整表を作ればいいと思います。

それでも、どうしても教科書通りでないと気が済まない方は、ほかの作業がすべて終了してから日付を直せばよいのではないかと思います。

とにかく通帳の残高と銀行口座の帳簿残高とを一致させながら期末まで仕訳を切っていきます。

残高のチェック

通帳どおりに仕訳入力し、しかも、入力の際には預金口座ごとに補助科目を付していると、入力終了後に画面上で補助元帳を見ると、通帳の残高と一致しているはずです。

しかし、一致しないこともしばしばです。

普通預金a/cとするところを当座預金a/cとしてしまったらそれは絶対に一致しませんが、勘定科目は間違えていなかったとしても一致しないことがあります。

その原因として代表的なのが、補助科目の入力モレ別の補助科目を入力してしまうことです。

まず、「補助科目の入力モレ」とは、仕訳は計上されているものの、補助科目の入力を失念したために補助元帳には反映されないことです。 補助科目の入力がないだけで、仕訳としては入力されています。このため、その勘定科目の総勘定元帳では反映されます。

そこで、補助科目の入力を失念してしまった仕訳に直接補助科目を入力します。修正仕訳はしません。

Before

(借) 普通預金 XXX (貸) 売掛金(B社) XXX

After

(借) 普通預金(A銀行) XXX (貸) 売掛金(B社) XXX

また、別の補助科目を入力している場合があります。

Before

(借) 普通預金(C銀行) XXX (貸) 売掛金(B社) XXX

After

(借) 普通預金(A銀行) XXX (貸) 売掛金(B社) XXX

これらの修正によって、(補助)科目残高と通帳等の残高を完全に一致させます。

( つづく )