( 4 )入出金の原因となる情報の入力

事業活動の性質が現金取引でない場合には、売上代金の入金や事業活動に要した出金は、相手方への請求書または相手方からの請求書がベースとなります。

今度は、入金と出金の原因となった請求書等の情報を入力します。

「すべての取引先について1本で仕訳を入れるべきかどうか」「すべての取引について未払を計上すべきかどうか」など悩ましい問題もあります。

入金の基礎情報の入力

入金の原因となった情報の入力を行います。主として売上高の計上となります。

重要なのは、仕訳入力時に売掛金a/cに補助科目を付しながら入力することです。なお、通帳等の預金への入金の仕訳入力の段階ですでに売掛金a/cに補助科目を設定しながら入力していますので、大半の得意先はすでに補助科目が設定されているはずです。

(借) 売掛金(A社) XXX (貸) 売上高 XX
仮受消費税 X
売掛金(B社) XXX 売上高 XX
仮受消費税 X
売掛金(C社) XXX 売上高 XX
仮受消費税 X

いくつか問題点があります。

まず、すべて請求イコール売上なのかという問題です。前受金のための請求もあるからです。

次に、計上のタイミングの問題です。請求書ベースでの売上高の計上は、入金との消込みが楽なため実務上多く行われています。しかし、請求の締め日の違いなどにより、請求書発行のタイミングと会計基準等による売上高の発生(実現)のタイミングとは必ずしも一致しないことに注意する必要があります。

そして、入力は「まとめ」がいいか「バラバラ」がいいかの問題です。

まず、日常業務上、個々に得意先に対して取引の都度請求書を発行しているのか、それとも、すべての得意先に対して一定日に一括して請求書を発行しているのかにもよりますが、振替伝票でひとつの仕訳ですべての取引先についての売上情報を数十行または数百行で一括して計上するほうが効率的なのか、個々の得意先ごとにひとつの仕訳で売上高を計上するほうが効率的なのかは悩ましいです。

毎月売上高が発生する得意先については、ひとつの仕訳で一括計上するほうが効率的(仕訳を複写して毎月処理すればよい)ですが、行数が多い場合にはかえって面倒だったり、ある月で売上高のない得意先がいくつかあったりすると売上高ゼロで仕訳が登録されることになります。

請求先の数が毎月大きく異なる場合には、個々に計上したほうが効率的ですし、行数があまりにも多い場合にはいくつかの仕訳に分けたり、まとめて計上する請求先と個々に計上する請求先で仕訳を分けるのもひとつの考え方です。

出金の基礎情報の入力

つづいて、出金の原因となる情報を入力します。主として請求書となります。

やはり重要なのは、買掛金a/cや未払金a/cに補助科目を付しながら入力することです。なお、通帳等の預金からの支払いの仕訳入力の段階ですでに買掛金a/cや未払金a/cに補助科目を設定しながら入力していますので、大半の得意先はすでに補助科目が設定されているはずです。

(借) ○○費 XX (貸) 買掛金(A社) XXX
仮払消費税等 X
○○費 XX 買掛金(B社) XXX
仮払消費税等 X
○○費 XX 買掛金(C社) XXX
仮払消費税等 X
(借) 固定資産 XX 未払金(A社) XXX
仮払消費税等 X
○○費 XX 未払金(B社) XXX
仮払消費税等 X
(借) 給料 XXX (貸) 未払金 XXX

入金関係の場合と同様に、請求の締め日の違いなどにより、費用計上のタイミングとは必ずしも一致しないことに注意する必要があります。

また、上記のようにひとつの仕訳で当月に発行した請求書をまとめて計上するべきか、それとも、個々の請求書ごとにひとつの仕訳として計上すべきかについても、ケースバイケースで行うことになろうと思われます。

入金関係の請求書は相手科目が売上高などの収益なのに対して、出金関係の場合には、費用ばかりでなく(固定)資産として計上するものもありますひとつの請求書の中に複数の勘定科目を使用すべき取引が混在していることも少なくありません。また、消費税取引についての配慮も必要になります

しかし、考えすぎては前に進みません。迷いが生じたらムリせずに仮払金として処理しておきましょう

(論点)債務と相殺する形で入金する場合

売上に対する入金の時に債務が相殺される形態があります。この場合は、請求書というよりも、相手方からの支払通知書などによるものが多いと考えられます。

(借) 売掛金(B社) 756 (貸) 売上高 1,000
○○費 300 仮受消費税等 80
仮払消費税等 24

この場合のポイントは、相殺されるべき債務(費用)の発生のタイミングです。費用の発生と売上の発生とでタイミングにズレが生じている場合には、あえて仕訳をコンパクトにしない方法が考えられます。

(借) ○○費 300 (貸) 買掛金(B社) 324
仮払消費税等 24
(借) 売掛金(B社) 1,080 (貸) 売上高 1,000
仮受消費税等 80
(借) 買掛金(B社) 324 (貸) 売掛金(B社) 324

いったん買掛金a/cなどの負債勘定を通過させるシステム上求められている場合にはこのような処理となるでしょう。

(論点)法人カードや通信販売会社等の請求情報の入力

法人カードの場合のカード会社からの請求書や事務用品系などの通信販売会社からの請求情報の入力は、請求書の内容をチェックしながら、(固定)資産か費用か、勘定科目は何かをまとめながら計上することになります。

(借) 消耗品費 500 (貸) 未払金(X社) 1,512
仮払消費税等 40
事務用品費 300
仮払消費税等 24
交際費 600
仮払消費税等 48

ところで、カード会社の決済の締め日は月初から月末ということはまれで、月の途中から翌月の途中までがポピュラーです。 このため、カード会社からの請求書に基づいてひとつの仕訳で計上すると、実際の取引日とは異なる計上となります。

期中処理は簡便上それでもかまいませんが、固定資産の場合には減価償却のタイミングがひと月遅れたりします。決算日が含まれる場合には、計上モレが発生することになります。

このため、カード会社からの請求書に基づいて請求書に記載されている日付ごとに個々に仕訳を切るべきです。

内部統制やシステムの関係で、月次決算確定後は前月以前の日付で入力できない場合には、取引のときに発行される店舗等のスリップや納品書等によって仕訳を計上することになります。

さて、カード利用の場合、現実には、カードを利用した店舗に対していったん未払金が発生し、この未払金がカード会社への未払金に替わるということになりますが、これを仕訳に反映させるのは現実的ではありません。カード会社に対する未払金としましょう。

(借) 消耗品費 500 (貸) 未払金(X社) 540
仮払消費税等 40
(借) 事務用品費 300 (貸) 未払金(X社) 324
仮払消費税等 24
(借) 交際費 600 (貸) 未払金(X社) 648
仮払消費税等 48

カード利用やオーダーの都度に仕訳を入力している場合、カード会社や通販会社からの請求書でさらに入力を行うと二重計上となります。

しかし、未払金a/cの補助科目でキチンとコントロールできていれば、二重計上すると残高が残ることになります。

さらに、とくにカード利用のときに店舗等から領収書を入手し、これに基づいてさらに仕訳を入力すると、さらに費用等が計上されてしまいます。

しかも、店舗等から出される領収書は通常「クレジットカード利用」と記載されているのに、その他の領収書のように現金(または従業員等が個人で立て替えた未払金)で支払ったものとして入力してしまうと現金a/cが事実と異なることが考えられます。

この場合でも、通常は勘定科目と日付が同一であるため、後でチェックすることにより二重計上は判明しますが、勘定科目あるいは日付の入力が異なっていたり、どちらかが他の取引と同じくまとめて入力されていたり、現金管理が不十分なのに現金取引として仕訳していると、このミスに気付きにくいことがあるので注意します。

(論点)未払を計上すべきか現金主義的に処理すべきか

取引発生日と支払日が異なる場合、教科書的にいえば、いったん買掛金や未払金を計上し、支払時には買掛金や未払金の残高を減少させることになります。

(借) ○○費 XX (貸) 買掛金 XXX
仮払消費税等 X
(借) 買掛金 XXX (貸) 預金等 XXX

システム上、買掛金a/cや未払金a/cを計上しないと支払処理ができないようになっている場合には、必ずこの処理を行うことになります。

いっぽう、そのような制約がない場合、買掛金a/cや未払金a/cを使わずに、支払時に費用計上をする、つまり、現金主義的な処理は、仕訳が1本で済むため実務上も多く行われています。

(借) ○○費
仮払消費税
XX
X
(貸) 預金等 XXX

どちらを採るかの判断基準としては次のようなものが考えられます。

  • 当該取引が事業上重要な場合や金額が大きい場合には買掛金や未払金を計上すべきです。
  • 手形決済の場合には買掛金や未払金を計上すべきです。
  • 月次決算の精度を上げたい場合には買掛金や未払金を計上すべきです。
  • 取引金額が小さく、頻繁に取引が発生する場合には、期中は買掛金や未払金は使わず、決算時に必要に応じて買掛金や未払金の計上します。

( つづく )