まだ会計ソフトだけで仕訳入力してるんですか?

従来的な会計ソフト上での作業(登録された摘要情報などを使ったり仕訳の複製機能を使う)に加えて、「自動仕訳され取り込まれた情報を会計ソフト上で検証・修正する」「会計ソフト上で入力するのではなくExcel上で仕訳情報を作成して会計ソフトにインポートする」・・・これらの最適なバランスを常に考えることが重要です。

個人レベルでの働き方改革

万人ひとしく時間が平等だとすると、同じパフォーマンスならばいかに早いか、いかにラクか、いかに低コストかを徹底追及することになります。

単純にパカパカ入力する仕事そのものが好きだったり、それが生業だったりするとなかなか生まれない発想かもしれませんが、速攻で仕事を終わらせ、仕事が終わっていないふりをして時間が経つのを待つのもまたクレバーなやり方で、ある意味「個人レベルでの働き方改革」だと思われます。

トレードオフ

会計実務で常に考慮しなければならないことは次の2点です。

  • いかに手間を省くか
  • いかに検証可能性を高めるか

いかに手間を省くか

かつて、何でもかんでも手入力だったため、仕訳の数はなるべく減らすことが重要でした。

入力作業に手間がかかるため、入力しただけでお腹いっぱいになってしまい、入力した結果としての財務情報を分析して適切なアドバイスを行うという本来的な業務に達せず、税金の計算だけに堕してしまうことが多々ありました。

本来、会計の原則に忠実になれば、発生主義により仕訳を計上すると収益(費用)と債権(債務)の計上と債権(債務)の回収(弁済)の計上で2本仕訳が必要となります。 しかし、これでは、入力担当者の負荷がかかります。 そこで、期中の会計処理はすべて入出金により収益と費用を計上し、期末の決算時で売掛金や買掛金を計上するようなことも行われていました(行われています。)。

個々の取引ごとに消費税の判断を正確にしようとすると効率が悪いために税込経理方式によって仕訳処理をすることも行われていました(行われています。)。

これらの処理は、それはそれで悪くないのですが、「月次決算って何なのか」という疑問はあります。

また、本来ならば「1行対n行」あるいは「n行対1行」の仕訳(振替伝票)がわかりやすいのに、効率だけを重視して「借方1行・貸方1行」の仕訳入力だけというものもあります。

いかに検証可能性を高めるか

仕訳と会計帳簿は正確でなければなりません。会計的や税務的な判断が伴う仕訳もありますが、その前提として日々の取引が正確に計上されていなければそのようなレベルに到底及ばず、誰でもできるなりゆき決算に堕してしまいます。

入力した会計情報が正確かどうかを容易にかつ迅速にチェックできなければなりません。そのためには、簡単にチェックできるような仕訳、さらにその前提としての勘定科目や補助科目の設定が重要です。

さらに、最終的には他部門または外部の人間に検証可能なものでなくてはなりません。雑な仕訳で入力された元帳は、入力担当者以外には難解であるため、検証者は担当者に常に質問をしていなければならず、双方のムダな時間とエネルギーが生じることになります。

自動仕訳とその検証

いかに手間を省くか、いかに検証可能性を高めるか、これはトレードオフの関係といえます。

スキャンして自動入力などの精度が上がってきていますが、自動入力されたものが正しいかどうか検証でき、適切に修正できるかことが重要です。

自動入力のルールを設定した後で、「金額を区分したほうがいい」「やはり別の勘定科目のほうが適切だ」とか「ここは取引量が多いので補助科目を使ったほうがいい」ということは日常茶飯事です。この判断ができるかどうか、そして、過去分も含めて適切に補正できるかどうかがポイントとなります。

それはけっきょく「まずは会計ソフト上で手入力による仕訳処理や決算作業ができるかどうか」に尽きます。

入力された情報を見て、あれがどうだこれがどうだと問題点を指摘できる方は多いですが、「じゃあ具体的に会計ソフトで自分で修正してみせて」と追い込むとたちまち凍り付く方もいます。

入力実務の発展段階

第1段階

会計ソフトを起動して、紙でプリントアウトされた伝票を見ながらテンキーなどを使ってバカバカ仕訳入力する・・・かつてはよく見られた光景です。

しかしながら、伝票を作るのに数値を入力し、それをプリントアウトし、それを目で見ながら再び会計ソフトで数値を入力する・・・これほどの時間と労力のロスはあるでしょうか。

とりわけヒドいのは、数値を伝票と会計ソフトの2回打ち込んでいる点です。ミスを引き起こしかねません。

せめて、伝票を作るために入力した数値をそのまま会計ソフトに使いたいところです。

仕訳のための伝票をそもそもExcelのシートで作成し、これをプリントアウトして上位者の承認の印鑑等を押すような場合、会計ソフトに入力する場合、プリントされた伝票を見て会計ソフトに入力するのではなく、Excelのシートに入力された数字をそのままコピー&ペースト(コピペ)すれば断然効率的でミスが少ないです。

しかし、それで十分でしょうか。伝票をExcelで作成するときに、根拠となる証憑などから数字を手で打ち込んでいないでしょうか。

証憑等が先方の請求書や検収書である場合、これらExcelなどで作られた基礎資料があるものです。先方の協力が必要になるとはいえ、基礎資料から会計ソフトに直接コピペしたいところです。

数値だけではなく、伝票に入力する摘要情報も同様です。

第2段階

一歩進み、定型的な仕訳については、すでに前月分で仕訳入力した伝票(伝票)を会計ソフト上で複製して、金額や摘要を入力し直すことはよく見られる光景です。

しかし、それで十分でしょうか。会計ソフト上で、いちいち仕訳を画面に出し、数値欄を手入力したりコピペしたり、あるいは、摘要欄を修正するためにダブルクリックしてカーソルを当てたりするのはものすごく時間のロスです。

そうすると、会計ソフト上で仕訳を入力することそれ自体が時間のムダではないかという発想になります。

第3段階

そこで、会計ソフト上で仕訳をするのではなく、仕訳データを作って、これを会計ソフトにインポートすることになります。

仕訳データはExcel上で行います。

会計ソフト上で直接仕訳入力をするのではなく、Excelで行うメリットは次のとおりです。

  • 作業が楽なので、仕訳数が多いことはほとんど苦になりません。このため、発生主義に忠実な会計処理を苦労せずできることになります。
  • 銀行の取引情報など、もともとの数字がExcel(CSVファイル)で作成しているもの(作成されているもの)が多いため、Excel同士の別シートへのコピペなので効率的です。Excelから会計ソフトへのいちいちコピペする必要がありません。
  • 会計ソフトでの「摘要辞書」「仕訳辞書」といった類は、登録件数が多くなるとイライラしてきますが、Excel上ならば通常の入力のため楽チンです。さらに、会計ソフト上で仕訳を複製する場合、摘要を「1月分」から「2月分」に変更する場合に、いちいち行ごとにダブルクリックして修正しなければなりませんが、Excelの置換機能によって数十行の変更も瞬時に行うことができます。
  • 摘要の内容については、Excelの文字列操作の関数を使って「半角スペースで区切る」「2行に分けて管理している文字列をつなぐ」などはいくらでも行うことができます。

とはいっても、いきなり仕訳データなど作れるわけがありません。

そこで、過去に会計ソフトに入力した情報を使います。前年度などの仕訳日記帳や、前月の仕訳日記帳をエクスポートして、この仕訳はどのようなデータになっているのか確認します。

この情報を基にして、新しい仕訳データを作成することになります。

さて、仕訳データはExcelで作りますが、正確にはCSVファイルです。

会計ソフトからの仕訳のエクスポートでは、テキストファイル形式で行われることが多いのですが、この場合にはExcelでブックを開き、「データ」→「外部ファイルの取り込み」→「テキストファイル」にして取り込むことになります。

私の場合は、会計ソフトからのエクスポートの時の「ファイル名」の末尾に「.csv」と入力し、「ファイルの種類」で「すべてのファイル」とすることで直接CSVファイルでエクスポートしています。

さらに私は次のような作業をけっこうやっています。

  • いったん入力された仕訳データをエクスポートして、勘定科目を変更したり補助科目を追加して再びインポートする。
  • 古い会計ソフトでは消費税率5%でしかできないところ、いったん入力した仕訳データをエクスポートして、すべての仕訳の消費税額を8%に変更して(Excel上なのであっと言う間です)、再びインポートする。

つまり、「仕訳入力全部やり直し」「仕訳総とっかえ」も簡単なのです。

自動仕訳で取り込まれた不完全なデータをチェックし修正・削除するのに極めて有用なテクニックといえます。

まとめ

会計ソフトへの入力はいかに時間とエネルギーを省くかが重要となります。それはムダな入力コストと対価の削減、専門家にとってはサービスのクオリティに直結します。

とはいえ、入力をどう行うかはしょせん手段にすぎず、従来的な手入力に加えて「会計ソフト上の仕訳の複製機能を有効に使う」「会計ソフト上で入力するのではなくExcel上で仕訳情報を作成して会計ソフトにインポートする」「自動仕訳された情報の検証する」などの最適なバランスを常に考えながら行うことが重要と考えられます。

日進月歩に技術が進歩していると、いろいろな工夫もすぐに陳腐化し「時代のアダ花」となるでしょうが、過去そして現在を否定し、常にいかにラクに処理できるかを貪欲に考え、最新技術を取り込んでいかないと、あっという間に取り残されるでしょう。

(おわり)